Raspberry Piで使えるmicroSDカードを、Raspberry Pi 4のmicroSDカードスロットでの測定と、WindowsでCrystalDiskMarkを使ってベンチマークを測定しました。
手持ちの4枚のmicroSDカードの測定をしましたが、カタログスペック的に性能が低そうなApacerのmicroSD32GBがRaspberry Piでは一番数値が良いという意外な結果になりました。
もくじ
測定環境
測定対象のmicroSDカードは以下の4種類です。
- Apacer microSDXC/SDHC UHS-I U1 クラス10 32GB
- SAMSUNG microSD EVO plus 256GB(2020年Model)
- Transcend Premium 400x microSD 32GB
- Kingston Canvas Select Plus microSD 32GB
測定環境は以下のパターンにて測定します。
- Raspberry Pi 4のmicroSDカードスロット
- Raspberry Pi OSで「PiBenchmarks」を使用
- USB microSDカードリーダー(Kingston Mobile Lite Plus microSDリーダー)
- Windows10で「CrystalDiskMark 8.0.1 x64」を使用
microSDカードの詳細情報
Apacer(アペイサー) microSDXC/SDHC UHS-I U1 クラス10 32GB
仕様
UHS-I
UHS Speed: Class 1(U1)
Speed Class: Class 10
SPEED
読み出し:最大45MB/s
書き込み:最大20MB/s
SAMSUNG microSD EVO plus 256GB(2020年Model)
仕様
UHS-I
UHS Speed: Class 3 (U3) (512/256/128GB)
Speed Class: Class 10
SPEED
読み出し:最大100MB/s (512/256/128/64GB)
書き込み:最大90MB/s (512/256GB)
Transcend Premium 400x microSD 32GB
仕様
UHS-I
UHS Speed: Class 1 (U1)
Speed Class: Class 10
SPEED
読み出し:最大90MB/s (45MB/s?)
書き込み:不明MB/s
Kingston Canvas Select Plus microSD 32GB
仕様
UHS-I
UHS Speed: Class 1 (U1)
Speed Class: Class 10
SPEED
読み出し:最大100MB/s
書き込み:不明MB/s
microSDカードの規格
SDアソシエーションにて、メモリカードに関する規格の策定が行われています。
- 記憶容量
記憶できるメモリー容量を示します。
32GB、64GB、256GB、2TBなど
- カードの規格
記憶容量に伴う、カード規格になります。
SD(~2GB以下)、SDHC(~32GB以下)、SDXC(~2TB以下)、SDUC(~128TB以下)と容量によって表示が変わります。
- UHS-I/UHS-II/UHS-III/SD Express
SDバスインタフェース仕様規格で、コネクタ形状も違います。
UHS-Iは104MB/sec
UHS-IIは312MB/sec
UHS-IIIは624MB/sec
SD Express Gen3は985MB/sec
SD Express Gen4は1970MB/sec
SD Express Gen4x2は3940MB/sec
となっています。
- スピードクラス
最低転送速度を保証する規格です。
「Cの中に10」と書いてある場合、「Class 10」を意味して最低でも10MB/sの転送速度を保証します。
- UHSスピードクラス
最低保証転送速度を表します。 「U1」は10MB/s、「U3」は30MB/s
ロゴの見た目は、Uの中に数字の1が入ったマークになります。
- ビデオスピードクラス
最低転送保証する規格で、4Kや8Kなどの高画質な動画を撮影する機器向けに制定された規格です。
「V」の横の数字が速さを表しており、「V30」なら最低保証速度が30MB/sであることを示します。
目安として、最低フルHDビデオなら「V10」、4Kビデオなら「V30」、8Kビデオなら「V60」以上のものを選びます。
- アプリケーションパフォーマンスクラス
スマホなどでSDカードにインストールされたアプリケーションの実行やデータ保存を快適に行う規格です。
「A1」「A2」とあらわされて、詳細は下記のようになります。
「A1」は最低保証速度が10MB/s、ランダムアクセスRead 1500(IOPS)/Write 500(IOPS)
「A2」は最低保証速度が10MB/s、ランダムアクセスRead 4000(IOPS)/Write 1500(IOPS)
IOPSはInput Output Per Secondの略で、一秒間に何回読み込みができるか、書き込みができるかを表します。
ベンチマーク結果
CrystalDiskMarkの測定結果
Windows10で「CrystalDiskMark 8.0.1 x64」を使用して測定した結果です。
各メディアはFAT32でのフォーマットでの測定結果になります。
Apacer(アペイサー) microSDXC/SDHC UHS-I U1 クラス10 32GB
SAMSUNG microSD EVO plus 256GB(2020年Model)
Transcend Premium 400x microSD 32GB
Kingston Canvas Select Plus microSD 32GB
シーケンシャルReadは各メディアそこまで差がなく、ランダムReadとランダムWriteに差が出ています。
PiBenchmarksの測定結果
PiBenchmarksは、Raspberry Pi用のストレージベンチマークソフトで、スコアで結果が表示されるため分かりやすいベンチマークになっています。
測定の仕方
測定するメディアが、起動メディアの場合
$ sudo curl https://raw.githubusercontent.com/TheRemote/PiBenchmarks/master/Storage.sh | sudo bash
測定メディアを指定する場合
$ wget https://raw.githubusercontent.com/TheRemote/PiBenchmarks/master/Storage.sh
$ chmod +x Storage.sh
$ sudo ./Storage.sh /メディアのパス名
Apacer(アペイサー) microSDXC/SDHC UHS-I U1 クラス10 32GB
次の3つの規格で、アプリケーションスピードクラスが2で、ビデオスピードクラス30、UHSスピードクラスが3他のメディアよりパラメーターが高い結果になりました。メーカーのスペックには載っていない結果のため意外な結果になりました。
MicroSD information: Clock Speed: 50.0 - Manufacturer: 0x0000ad - Model: USD00 - Vendor: LS - Product: SD - HW Version: 0x1 - FW Version: 0x0 - Date Manufactured: 11/2020
Class: A2 Class 10 V30 U3
SAMSUNG microSD EVO plus 256GB(2020年Model)
次の1つの規格で、UHSスピードクラスが3で高い結果になりました。こちらは、スペック情報にも載っているため正しい結果です。
MicroSD information: Clock Speed: 50.0 - Manufacturer: Samsung - Model: EE4S5 - Vendor: SM - Product: SD - HW Version: 0x3 - FW Version: 0x0 - Date Manufactured: 03/2021
Class: A1 Class 10 V10 U3
Transcend Premium 400x microSD 32GB
MicroSD information: Clock Speed: 50.0 - Manufacturer: Transcend - Model: USDU1 - Vendor: J` - Product: SD - HW Version: 0x2 - FW Version: 0x0 - Date Manufactured: 07/2016
Class: Class 10 U1
Kingston Canvas Select Plus microSD 32GB
MicroSD information: Clock Speed: 50.0 - Manufacturer: Texas Instruments - Model: SD32G - Vendor: TI - Product: SD - HW Version: 0x6 - FW Version: 0x1 - Date Manufactured: 03/2021
Class: A1 Class 10 V10 U1
Category | Test | Apacer | Samsung | Transcend | Kingston |
HDParm | Disk Read(MB/s) | 41.49 | 42.96 | 41.32 | 38.24 |
HDParm | Cache Disk Read(MB/s) | 41.81 | 43.32 | 31.52 | 38.63 |
DD | Disk Write(MB/s) | 27.6 | 32.9 | 16.1 | 15.4 |
FIO | 4k random read(IOPS) | 4322 | 3730 | 2367 | 2096 |
4k random read(KB/s) | 17289 | 14921 | 9468 | 8384 | |
FIO | 4k random write(IOPS) | 1501 | 641 | 373 | 590 |
4k random write(KB/s) | 6004 | 2564 | 1494 | 2362 | |
IOZone | 4k read(KB/s) | 13248 | 11278 | 7089 | 7778 |
IOZone | 4k write(KB/s) | 4957 | 2577 | 1254 | 2001 |
IOZone | 4k random read(KB/s) | 11050 | 9528 | 6921 | 5656 |
IOZone | 4k random write(KB/s) | 4710 | 2666 | 1103 | 2143 |
Score | 1700 | 1336 | 767 | 838 |
シーケンシャルアクセスはSamsungのmicroSDカードが早くて、ランダムアクセスはApacerのメディアが早い結果になりました。
そのため、総合的にはApacerのメディアが一番Scoreが良い結果になりました。
Raspberry Pi 4の電源ONからデスクトップ画面表示時間
各microSDカードに、Raspberry Pi OSをインストールして、Raspberry Pi 4の電源ONからデスクトップ画面が表示されるまでの時間を計測しました。
メーカー | Apacer | Sumsung | Transcend | Kingston |
---|---|---|---|---|
1回目 | 28.12 | 30.20 | 29.97 | 29.73 |
2回目 | 28.50 | 30.20 | 30.53 | 29.75 |
3回目 | 29.21 | 29.83 | 30.20 | 30.20 |
4回目 | 29.08 | 29.73 | 29.76 | 30.20 |
平均 | 28.73 | 29.99 | 30.12 | 29.97 |
ApacerのmicroSDの起動時間がランダムアクセス性能が効いているのか、一番早い結果になりました。
まとめ
Sumsungのメディアがカタログスペック上は一番性能が高かったので、一番良い結果が出ると思いましたが、カタログスペック的に性能が低い、ApacerのmicroSDカードが総合的に一番良い結果になりました。
OSの起動時間に影響がありそうなのは、各社シーケンシャルリードはそこまで差がないため、ランダムアクセス性能が高い方が早くなることが分かりました。
少しでも、快適にRaspberry Piを動かすには、ランダムアクセス性能の高いmicroSDカードを選ぶようにすると良いと思います。
目安として使えるのは、アプリケーションスピードクラスの「A3」の物を選ぶと良いと思います。
とは言っても、結局は安いメディアを選んでしまいますが。。。
以上、「Raspberry PiでmicroSDカードの性能測定」の内容でした。